ユーリ・オレフィレンコ (揚陸艦)

ユーリ・オレフィレンコ
基本情報
建造所 レモントワ造船所(ウクライナ語版)
運用者  ソビエト連邦海軍(1971年-1991年)
 ロシア海軍(1991年-1994年、2014年)
 ウクライナ海軍(1994年-)
級名 ポルノクヌイ級揚陸艦(英語版)
艦歴
起工 1970年4月21日
進水 1970年12月31日
就役 1971年5月31日
現況 2024年5月29日に破壊?(ウクライナ海軍は否定)[1][2]
改名 SDK 137(1970年-1996年)、U401「キロヴォフラード」(1996年-2016年)、L401「ユーリ・オレフィレンコ」(2016年-)[3]
移管 ウクライナ海軍
要目
排水量 1,192t
長さ 81.3m
9.3m
深さ 2.3m
最大速力 18ノット
搭載能力 物資約130-175t
または車両35t
T-72中戦車×4両
ATS-1砲兵トラクター×3両および口径122mm-152mmの野砲×3門
トラック×9両)
兵装 AK-23030mm連装機関砲×2門、
WM-18 140mm 18連装ロケット砲×2基[4](1970年-2023年)
BM-21 122mm 40連装ロケット砲×1基(2023年-)
9K34 艦対空ミサイル4連装発射機×2
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ユーリ・オレフィレンコウクライナ語: Юрій Олефіренко)は、ウクライナ海軍揚陸艦(タイプ773型、NATOコードポルノクヌイC級揚陸艦(英語版))。

1971年にソ連海軍に就役し、1994年にウクライナ海軍に移籍した[5]。就役以来、ネミフ海軍基地を拠点として活動していたが、2014年のロシアによるクリミアの併合後はオチャキウを拠点として活動している。

艦歴

ソ連海軍

ポーランドレモントワ造船所(ウクライナ語版)で中型揚陸艦SDK-137として建造された。この艦は1970年12月31日に進水し、1971年5月31日、ドヌズラフ(ウクライナ語版)のクリミア海軍基地を拠点とするソ連海軍歩兵第39海兵師団 (39-й дивизии морских десантных сил) に配属された。

1973年第四次中東戦争では、ソ連海軍の地中海部隊として中東地域で行動した。10月16日、SDK-137の砲手だったP.グリネフ曹長は、接近するイスラエル空軍のF-4ファントムII戦闘機を発見し、これを撃墜した。この功績でグリネフ曹長は赤星勲章を授与されたが、イスラエル空軍は同日に損失したF-4IIは無いしている[6]

1983年、第39海兵師団(ロシア語版)が新編され、SDK-137は第197揚陸艦旅団の第147中型揚陸艦師団に所属した。

ウクライナ海軍編入

ソ連崩壊後の1994年4月、SDK-137はウクライナ海軍に編入され、キロヴォフラード州の州都に因みU-401「キロヴォフラード」と命名された[注釈 1]。 ウクライナ海軍は、1996年1月10日からキロヴォフラードの運用を開始した。

1998年、第2旅団に組み込まれ、修理のためバラクラヴァ船舶修理工場「メタリスト」に再配備された。一連の国際演習に参加した後、 2001年に中規模のオーバーホールが行われ、2002年2月から運用が再開された[6]。2008年末に、250万フリヴニャをかけて再びオーバーホールが行われた。2010年9月17日、国際演習「インタラクション2010」の演習中に、WM-18多連装ロケットシステムの発射制御装置がロケット砲2発を誤射し、艦内で爆発事故が発生した。船倉と積載していた車両が損傷したほか、消火作業中に4名が負傷し、医療機関で治療を受けた[7]

2012年にキロヴォフラードは、ウクロボロンプロム(ウクライナ語版)ムコライウ造船所(ウクライナ語版)に入渠し、艦首扉や揚陸ランプ、ディーゼル発電機を換装した。2013年9月27日、キロヴォフラードはイズマイールに寄港し、地元の祝賀行事に参加した[6]

2014年3月21日、キロヴォフラードはロシア海軍拿捕されたが、交渉の結果、4月19日にロシア側がウクライナに返還した[5]。キロヴォフラードはタグボートオデッサまで曳航した。

2016年7月3日のウクライナ海軍記念日に、キロヴォフラードはペトロ・ポロシェンコ大統領によってユーリ・オレフィレンコに改名された。新たな艦名は、2015年1月16日にテロリスト掃討作戦の指揮中に戦死した第73海軍特殊作戦センター(ウクライナ語版)ユーリ・オレフィレンコ(ウクライナ語版)大佐に因む[8][9]

軍事演習「Kozac'ka Volia 2018」でハンヴィーを揚陸するユーリ・オレフィレンコ(2018年9月29日)

2018年5月23日、ユーリ・オレフィレンコは装甲艇アッカーマン(ウクライナ語版)ヴィショロド(ウクライナ語版)とともに、ウクライナ海兵隊創設100周年記念式典に参加した。 同時に、シロキン、レベディンスケ、ヴォディアネ、チェルマリク、クリミアの一時占領地との行政境界線上のチョンガル、黒海とアゾフ海の沿岸、およびユーリー・オレフィレンコの船上で、海兵隊員は黒いベレー帽を紺色のベレー帽に取り替えた[10][11]

2019年6月7日、ユーリ・オレフィレンコは大規模修理のためにムコライウ造船所に入渠した。船体の外板と構造、エンジンとディーゼル発電機、電気機械部品、プロペラ、操舵システム、錨係留装置[12]、さらに艦橋にあるAK-230や上陸用タラップの修復も行われ、9月上旬には主な機関システムとディーゼル発電機の修理が予定通り完了する予定であった[13]。しかし、システムの1つで問題が発見され追加の作業が必要となったため、修理が完了したのは2020年1月16日のことだった。

2020年、船体と艦底部の取水装置を修復するためにドック修理が行われた[14][15]。7月1日、再び修理のためにムコライウ造船所に入渠した[16]。ユーリ・オレフィレンコは中型船の修理を専門とする特別な浮きドック(スリップウェイデッキの長さ139.50m、幅24.60m、積載量7,000t)[16]に入渠し、11月30日、修理を終えて任務に復帰した[17]

ロシアによるウクライナ侵攻

ロシアのウクライナ侵攻開始後の2022年4月、ロシアのメディアはベルジャーンシクでユーリー・オレフィレンコが再びロシア軍に拿捕され、ノヴォロシースクに移送された可能性があると主張した[18]。しかし6月3日、ロシア側は数隻の民間船舶とユーリ・オレフィレンコを含むウクライナ海軍の艦船が駐留していたオチャキウの港への砲撃の動画を公開した[19]。この動画が正確ならば、ユーリ・オレフィレンコは拿捕されておらず、ロシアの侵攻開始から約100日にわたりウクライナ海軍で運用されていたことになる[5]。この事からDEFENSE EXPRESSは、オチャキウにはウクライナ軍の人質がおり、オチャキウ港は4つの港からの出口であるため、ロシア軍が占領下のヘルソンとの水路を開通するのを妨げていると結論付けた。ウクライナ南部のムイコラーイウ港(ウクライナ語版)ニカテラ港(ウクライナ語版)オルビア港(ウクライナ語版)ヘルソン港(ウクライナ語版)が一斉に閉鎖された[19]

6月23日、ユーリ・オレフィレンコは勇気と勇敢さに対する栄誉賞を受賞した[20]。10月29日には、撮影日は不明だが、WM-18 140mm 18連装ロケット砲で発砲する動画が公開された[21]

2023年1月の時点で、ウクライナ海軍に残る大形艦はユーリ・オレフィレンコのみとなっていた[22]。3月の時点では、甲板上のWM-18 140mm 18連装ロケット発射機 2基が撤去され、代わりにBM-21 122mm 40連装ロケット砲 1基が設置された[23]。5月31日、ロシア国防省イゴール・コナシェンコフ報道官は、2日前の5月29日にウクライナ海軍最後の軍艦であるユーリ・オレフィレンコを、ロシア航空宇宙軍が「高精度兵器[注釈 2]」で「破壊した」と発表したが、ウクライナ海軍は否定した[1][2]

脚注

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注釈

  1. ^ キロヴォフラードは2016年7月14日をもってクロピヴニツキーに改称された。
  2. ^ オレフィレンコがミサイルを表すのによく使う用語である。

出典

  1. ^ a b Russia says Destroyed Ukraine's last 'warship' - ウェイバックマシン(2023年5月31日アーカイブ分)
  2. ^ a b Russia says it destroys Ukraine's 'last warship' - ウェイバックマシン(2023年5月31日アーカイブ分)
  3. ^ “Ради десантного корабля «Юрий Олефиренко» в Николаеве разводили мосты” (ロシア語). www.niknews.mk.ua (2018年5月19日). 2024年6月19日閲覧。
  4. ^ “ВЗРЫВ НА СДК «КИРОВОГРАД»: кто виноват? :: Черноморский флот - 2017. Новости Севастополя и Крыма”. web.archive.org (2016年9月29日). 2024年6月19日閲覧。
  5. ^ a b c Ukrainian Navy Ship In Dramatic Escape, Survives Russian Artillery Attack - ウェイバックマシン(2022年6月10日アーカイブ分)
  6. ^ a b c Престарелый убийца израильского Фантома вышел в Черное море - ウェイバックマシン(2013年9月27日アーカイブ分)
  7. ^ ВЗРЫВ НА СДК «КИРОВОГРАД»: кто виноват? - ウェイバックマシン(2010年9月20日アーカイブ分)
  8. ^ InfoResist.org (2024年6月18日). “Десантный корабль назвали в честь погибшего в АТО командира спецназа Олефиренко | ФОТО” (ロシア語). inforesist.org. 2024年6月19日閲覧。
  9. ^ “Про присвоєння імені Юрія Олефіренка середньому десантному кораблю "Кіровоград" 5 бригади надводних кораблів Південної військово-морської бази Військово-Морських Сил Збройних Сил України” (ウクライナ語). Офіційний вебпортал парламенту України. 2024年6月19日閲覧。
  10. ^ “Українські морпіхи отримали нові берети й нову дату професійного свята” (ウクライナ語). www.ukrinform.ua (2018年5月23日). 2024年6月19日閲覧。
  11. ^ 5 канал (2018-05-23), 100 років морської піхоти України: урочисті заходи, https://www.youtube.com/watch?v=98VUjJR2djQ 2024年6月19日閲覧。 
  12. ^ “Розпочався ремонт корабля «Юрій Олефіренко»” (ウクライナ語). Мілітарний. 2024年6月19日閲覧。
  13. ^ “Ремонт СДК "Юрій Олефіренко" триває за графіком” (ウクライナ語). МИКОЛАЇВ - МІСТО КОРАБЕЛІВ (2019年9月4日). 2024年6月19日閲覧。
  14. ^ “Facebook”. www.facebook.com. 2024年6月19日閲覧。
  15. ^ “Завершився ремонт корабля «Юрій Олефіренко»” (ウクライナ語). Мілітарний. 2024年6月19日閲覧。
  16. ^ a b “Єдиний десантний корабель ВМСУ став на доковий ремонт” (2020年7月1日). 2024年6月19日閲覧。
  17. ^ https://m.facebook.com/story.php?id=100064581588556&story_fbid=748314502427347.html
  18. ^ Russia Taking Captured Ukrainian Navy Vessels Into Service - ウェイバックマシン(2022年5月26日アーカイブ分)
  19. ^ a b “Західні ЗМІ натякнули, як Очаків став важливою точкою в битві за Південь України (фото) | Defense Express” (ウクライナ語). defence-ua.com. 2024年6月19日閲覧。
  20. ^ “УКАЗ ПРЕЗИДЕНТА УКРАЇНИ №434/2022”. ウクライナ大統領府. 2024年6月19日閲覧。
  21. ^ “Capt(N) on Twitter: "#war The medium landing ship of the Polunochny Class of the Ukrainian Navy is firing with a 140-mm MLRS WM-18 at ground targets, the date and location of the shooting are unknown. It can be assumed that the video was shot in the area of the Kinburn Spit." / Twitter”. web.archive.org (2022年11月2日). 2024年6月19日閲覧。
  22. ^ David Axe (2023年1月24日). “ウクライナ海軍、英国供与のヘリで救助活動再開へ”. フォーブス・メディア. https://forbesjapan.com/articles/detail/60340 2024年7月9日閲覧。 
  23. ^ “Facebook”. www.facebook.com. 2024年6月19日閲覧。[リンク切れ]

関連項目

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