国の擬人化

国の擬人化(くにのぎじんか)とは、国家政府)や地域を人物として擬人化すること。

アメリカ合衆国アンクル・サムイギリスのブリタニア。足元にいるハクトウワシライオンもまた国家の擬人として度々扱われている。これは第一次世界大戦時の英米同盟を表す。
5月革命100周年を記念して描かれたアルゼンチンを擬人化した女性

概要

擬人化は対象に人間のような内面・心理を設定することで、世界を認知するための方法である[1]。社会的な存在である国家や地域を人として表すことは、メッセージを受け取る側と送る側にとっても関係性を強化することにつながり[2]、政治的パンフレットや美術作品などで伝統的に広く用いられていた。古代都市国家のアテナイは女神アテーナーを象徴としている。またアメリカ合衆国をあらわすアンクル・サムドイツをあらわすゲルマニア、フランスのマリアンヌが知られる[2]。それぞれの国家の国獣国旗を国家の擬人とする事もしばしば見られる。[3]

伝統的に用いられる国の擬人化

これらは非公式・公式を問わず、表現として用いられた国家の擬人化である。

画像 名称
アルバニアの旗 アルバニア マザー・アルバニア(英語版)
アルゼンチンの旗 アルゼンチン アルゼンチンの擬人化(英語版)ガウチョ、マルティーン・フィエロ
アルメニアの旗 アルメニア マザー・ハヤスタン(英語版)
オーストラリアの旗 オーストラリア リトル・ボーイ・フロム・マンリー(英語版) 、Australia 、ボクシング・カンガルー
オーストリアの旗 オーストリア オーストリア(擬人化)(ドイツ語版)
バングラデシュの旗 バングラデシュ バングラ・マー(英語版)
ベルギーの旗 ベルギー ベルギー(擬人化)(スペイン語版)小便小僧
ブラジルの旗 ブラジル 共和国の女神(英語版)バンディランテ (サンパウロ州)、Candango(ブラジリア)、ガウチョ (リオグランデ・ド・スル州)
ハンガリーの旗 ハンガリー ハンガリア(擬人化)(英語版)
ブルガリアの旗 ブルガリア 母なるブルガリア
カンボジアの旗 カンボジア プレア・トングとネアン・ネキイ(英語版)
カナダの旗 カナダ アダム・ドラール・デ・ゾルモー(英語版)王立カナダ騎馬警察ジョニー・カナック(英語版)37の老人(wikidata) (フレンチ・カナダ)、母なるカナダ
チリの旗 チリ ロト (擬人化)(英語版)ウアッソセニョリータ・ファニーナ(英語版)
コロンビアの旗 コロンビア フアン・バルデス
中華人民共和国の旗 中国 黄龍
ブータンの旗 ブータン ドゥク
チェコの旗 チェコ Čechie、チェコ・ヴァセック(英語版)二本の尾を持つライオン善良な兵士シュヴェイク(英語版)
デンマークの旗 デンマーク オジェ・ル・ダノワ母なるデンマーク(英語版)
ドミニカ共和国の旗 ドミニカ共和国 Conchoprimo
エジプトの旗 エジプト 世界の母(Om El Donia)
エルサルバドルの旗 エルサルバドル 世界の救世主の記念碑(英語版)
欧州連合の旗 欧州連合 エウローペーエウローパ・レーギーナ
フィンランドの旗 フィンランド スオミネイト
フランスの旗 フランス マリアンヌガリアの雄鶏(英語版)
ジョージア (国)の旗 ジョージア ゲオルギオス (聖人)、グルジアの母(英語版)
ドイツの旗 ドイツ ドイツ: ゲルマニア、ドイッチャー・ミヒェル(英語版)

バイエルン: バヴァリア (擬人化)(ドイツ語版)、ベルリン: ベロリナ(英語版)、ブラウンシュヴァイク: ブルノニア、フランコニア: フランコニア, ハンブルク: ハーモニア(英語版)、プロイセン:ボルシア、プファルツ選帝侯領: パラティア、ザクセン:サクソニア

ギリシャの旗 ギリシャ ヘラス(擬人化)(英語版)、ギリシア、アテーナー
ハイチの旗 ハイチ エジリ・ダントール(英語版)
アイスランドの旗 アイスランド レディ・オブ・マウンテン(英語版)
インドの旗 インド バーラト・マータドゥルガー
インドネシアの旗 インドネシア イブー・ペルティウィ
イランの旗 イラン キュロス2世
アイルランドの旗 アイルランド エリウバンバフォドラキャスリーン・ニ・フーリハン(英語版)ヒベルニア (擬人化)(英語版)、Granuaile、Scotia[4]
イスラエルの旗 イスラエル スルリク(英語版)
イタリアの旗 イタリア イタリア・トゥッリタ
北マケドニアの旗 北マケドニア 母なるマケドニア[5][6]
マルタの旗 マルタ メリタ (擬人化)(英語版)
メキシコの旗 メキシコ チャーロ (メキシコ)(英語版)チナ・ポブラナペラード(英語版)
モンゴル国の旗 モンゴル チンギス・カン
オランダの旗 オランダ オランダの乙女(英語版)ハンス・ブリンカー(英語版)、(ゼーラント州: en:Zeeuws Meisje (margarine)のキャラクター)
ニューイングランド ブラザー・ジョナサン(英語版)ピューリタンマツ.
ニュージーランドの旗 ニュージーランド キーウィ、ジーランディア(英語版)南の男(英語版) (南島 (ニュージーランド))
ノルウェーの旗 ノルウェー 母なるノルウェー(ノルウェー語版)オラ・ノールマン(英語版)とその妻カリ・ノールマン。ノリ (北欧神話)(英語版)
パレスチナの旗 パレスチナ
パレスチナ人の擬人化キャラクター「ハンダラ」
ハンダラナージー・アル=アリー(英語版)のキャラクター)
ペルーの旗 ペルー 祖国ペルー(英語版)
フィリピンの旗 フィリピン フアン・デラ・クルス、フィリピナス、ラプ=ラプ, ホセ・リサール、マリア・クララ
ポーランドの旗 ポーランド ポロニア (擬人化)(英語版)、レッヒ
マレーシアの旗 マレーシア ハン・トゥア(英語版)
ポルトガルの旗 ポルトガル ゼ・ポヴィーニョ(英語版)ルシタニア共和国の女神(英語版)バルセロスの雄鳥(英語版)、ポルトガルの守護天使
ルーマニアの旗 ルーマニア ルーマニア(擬人化)
ロシアの旗 ロシア 母なるロシアロシアの熊冬将軍
モンテネグロの旗 モンテネグロ 母なるモンテネグロ(英語版)
クロアチアの旗 クロアチア 母なるクロアチア(英語版)
スコットランドの旗 スコットランド カレドニア, ジャック・タムソン、スコタ(英語版)
セルビアの旗 セルビア 母なるセルビア(英語版)コソヴォの娘
シンガポールの旗 シンガポール マーライオン
タイ王国の旗 タイ サイアム・デヴァディラジ(英語版)
朝鮮半島 アムールトラ
スロバキアの旗 スロバキア ユライ・ヤーノシーク
スロベニアの旗 スロベニア マチャジュ王(英語版)
スペインの旗 スペイン ヒスパニア (寓意)(英語版)
ジョージア (国)の旗 ジョージア グルジアの母(英語版)
ベネルクスの旗ベネルクス レオ・ベルギクス
スウェーデンの旗 スウェーデン モダー・スヴェア(英語版)
スイスの旗 スイス ヘルヴェティア
トルコの旗 トルコ トルコ(擬人化)
リトアニアの旗 リトアニア リトアニア(擬人化)
ウクライナの旗 ウクライナ コサック・ママーイ
イギリスの旗 イギリス ブリタニア (女神)、ジョン・ブルライオンブルドッグ
アメリカ合衆国の旗 アメリカ (Columbia_standing_on_the_earth,_holding_an_American_flag_and_trademark_sign)_(LOC) コロンビア、アンクル・サム(連邦政府)、自由の女神
日本の旗 日本 やまとひめ[7]

[8]

ギャラリー

大衆文化における擬人化

現代の日本においては、人物(歴史上の人物や神話の登場人物など)や動植物から非生物(天体鉄道言語元素など)まで、あらゆるものが擬人化、キャラクター化されている[2]。それら萌え擬人化の一つとして国(広義にはや非独立地域民族の擬人化を含むこともある)の擬人化作品も、インターネット上などで多く見られる。

SNS上のみで展開される個人規模の物から、メディアミックスされる大規模な商業作品まで幅広く存在し、前者の例はポーランドボール、後者の例としては、アフガニスタンと周辺国を擬人化したあふがにすタン、アニメ化や舞台化もされたヘタリア、地政学的な側面を重視した地政学ボーイズなどが存在する。

また、各都道府県自治体などが、広報活動の一環として各地域を擬人化したキャラクターを制作していることもある[9]

萌え擬人化」も参照

脚注

  1. ^ 関沢英彦 2012, pp. 21.
  2. ^ a b c 関沢英彦 2012, pp. 26.
  3. ^ “中国、「最後の晩餐」なぞらえG7風刺 ネットに拡散”. 日本経済新聞. 2024年7月13日閲覧。
  4. ^ O'Clery, M. (2003) Annals of Ireland by the Four Masters as translated into English
  5. ^ A Manifesto from the Provisional Government of Macedonia. (1881). "Our mother Macedonia became now as a widow, lonely and deserted by her sons. She does not fly the banner of the victorious Macedonian army" 
  6. ^ Bulgarian graphic representation of Bulgaria, East Rumelia and Macedonia
  7. ^ 林みちこ『明治政府の対外美術戦略に関する研究 : 1910年日英博覧会をめぐって』筑波大学〈博士(芸術学) 甲第8234号〉、2017年。 NAID 500001374207。https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/43176 
  8. ^ “「ハッピー」”. タバコと塩の博物館. 2024年8月3日閲覧。
  9. ^ 真田風・倉田陽平「「都道府県擬人化」の分析」

参考文献

  • 関沢英彦「父さんは犬 : 広告における擬人化 (林龍二教授退任記念号)」(PDF)『コミュニケーション科学』第35号、東京経済大学 コミュニケーション学会、2012年、19-47頁、NAID 120005281415。 

関連項目