誘電エラストマー

誘電性エラストマー (ゆうでんせいエラストマー)は、電場により大きなひずみ(400%を超える)を生成するエラストマーである。マクスウェル応力を利用して電気エネルギーを直接運動エネルギーに変換することができる。誘電性エラストマーは、軽量で高い弾性エネルギー密度を持つ。誘電性エラストマーの電場駆動では、電流値はnAからμAの範囲で、熱損失がほとんどない。駆動電場は高い(数千ボルト)が、エネルギー効率は高い。現在のところ、大変形を誘起するのに適している。逆に外部から力を加えて変形させ、発電に使用されることもある。実際に運動量として取り出す機構については今も研究中であり、様々な構想が存在する。

原理

誘電性エラストマーは二枚の電極に挟まれている柔らかいコンデンサーである。 電圧 U {\displaystyle U} が印加されると、クーロン力により p e l {\displaystyle p_{el}} が生じる。したがってエラストマーは圧縮される。静電気力 p e l {\displaystyle p_{el}} の二倍である電極間圧力 p e q {\displaystyle p_{eq}} は、次式で求められる。

p e q = ε 0 ε r U 2 z 2 {\displaystyle p_{eq}=\varepsilon _{0}\varepsilon _{r}{\frac {U^{2}}{z^{2}}}}

ここで ε 0 {\displaystyle \varepsilon _{0}} は真空の誘電率。 ε r {\displaystyle \varepsilon _{r}} はエラストマーの誘電率。 z {\displaystyle z} はエラストマーフィルムの厚さ。

材料

エラストマー材料はシリコン系かアクリル系が使われることが多い。要件は以下のとおり。

  • 材料は低剛性である必要がある(大きな歪みを生むため)
  • 誘電率が高くなければならない
  • 絶縁破壊強度が高い

また、電極はエラストマーと常に接触している必要がある。電極は(金属電極、黒鉛粉末、シリコーンオイルとグラファイト混合物)などが用いられる。

機構

  • 額内面型アクチュエータ

二つの電極を誘電性エラストマーでコーティングしたもの。典型的には額縁様構造物でフィルムの周りを支持する。例として拡大する円。積層することもある。

  • 円筒アクチュエータ

コーティングされたエラストマーフィルムを円筒に巻き付けたもの。電圧を印加すると軸方向に力がかかり、伸張する。円筒アクチュエータは圧縮バネに巻き付けたり、あるいはコア無しでも用いることができる。円筒アクチュエータはマイクロロボットや弁に使われる。

  • ダイヤフラムアクチュエータ

平面的な構造として作られるが、z軸方向に力がかかる。一般的なダイヤフラムの膜自身がアクチュエータとして機能する。

  • シェル型アクチュエータ

エラストマーフィルムの特定の場所に複数の電極を取り付けたアクチュエータ。電圧を加えるとフィルムは複雑な三次元構造をとる。空気や水を介して車両の推進などに用いることができる。例えば飛行船など。

  • 積層アクチュエータ

面型アクチュエータを積層することで変形と力を大きくすることが出来る。特に短縮アクチュエータを造ることが出来る。

  • 厚みアクチュエータ

力と変位がz方向にかかるアクチュエータ。通常、z方向の変位を増加させるために積層されている平坦な膜である。

関連項目

外部リンク

  • 平井利博 (2008年7月22日). “進化する人工筋肉―ロボット、人工臓器、医療まで―” (PDF). 国際科学技術財団講演. 2012年9月6日閲覧。
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