VH-71 (航空機)

VH-71

着陸試験中のVH-71

着陸試験中のVH-71

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VH-71 ケストレル(Kestrel:チョウゲンボウの意)とは、現アグスタウェストランドが開発したEH101をベースとして、加えてロッキード・マーティンベル・ヘリコプターが共同で開発した、アメリカ海兵隊マリーンワン(アメリカ大統領専用機)用ヘリコプターである。VH-3D、及びVH-60Nプレジデントホークの後継とされていた(計画は中止、後述)。旧称US101

概要

2002年7月23日、アグスタウェストランド社とロッキード・マーティン社が中型ヘリの共同開発に関して10年間の契約に調印した。これは、アメリカ空軍アメリカ沿岸警備隊、そしてアメリカ海兵隊のマリーンワン向けに共同開発機を売り込む目的があった。

1961年から約50年が経とうとしている現在でも、マリーンワンとして運用されているVH-3であるが、老朽化と、最新設備を搭載する容量がもはや限界に達していた。加えて、UH-60ブラックホークを改造したVH-60Nも採用しているものの、輸送機への搭載が容易に出来る代わりに、キャビンが非常に狭いと言った欠点を持っていた。 そこで2003年12月アメリカ国防総省が次期大統領専用ヘリコプター計画(VXX)を発表し、このトライアルにUS101を提出した。

ここでライバルとなったのは、シコルスキー・エアクラフト社のH-92スーパーホークであった。このH-92のバックには、L-3 コミュニケーションズノースロップ・グラマンGE・アビエーションなどの有力企業が付いていた。しかし、要求されていた18人乗りかつVC-25エアフォースワン並みの機器を積んで640kmの航続距離を飛行すると言う条件が課されており、H-92ではほぼ新製しなければ到底満たせない条件であった。加えて、US101は3発エンジンだった事が決定打となり、2005年1月28日、US101がトライアルを勝ち抜き、VH-71ケストレルの名称を与えられた。

開発と打ち切り

国会議員らによるオバマ大統領への陳情書(pdf)

開発に関しては、AW側が36%、ロッキード・マーティンが31%、ベル・ヘリコプターが27%、と、他社6%(総計64%)で分配される事となっていた。2008年9月には初号機が初飛行テストに成功、2機が完成し、7機が完成間近の状態であった。

ところが、攻撃攪乱と対核兵器電磁波防御能力、さらにはキッチンの付与など、最終的に約1,900項目もの開発要求が次々追加されていき、当初60億ドル(約6,000億円:1ドル100円)だった開発予算総額が112億ドル(1兆1,200億円、イージス艦10隻が建造できる)と大幅に膨れ上がってしまい、1機4億ドル(400億円)と、F-22ラプター約2.5機分はおろか、VC-25エアフォースワン(3億2,500万ドル)より価格が暴騰してしまった事、2009年1月にアメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュからバラク・オバマに交代、オバマ政権による予算削減のプランに入ってしまい、2009年6月には開発契約を破棄され、事実上の計画打ち切りとなってしまった[2]。実現していれば、2017年度までには27機編成の部隊が発足予定であった。

今後、VH-71用に積み立てられた予算はVH-3D・VH-60の改修に充てられる事となった。これに対してアメリカ非営利団体である『政府の無駄に反対する市民(Citizens Against Government Waste)』がこれに異を唱え、老朽化したヘリを使用すべきではないし、予算を注ぎ込んだ計画を中止すべきではない」としている[3]

2014年5月7日、アメリカ海軍はシコルスキー・エアクラフトのS-92を、次期大統領専用ヘリコプターに決定したことを発表した[4]

性能諸元

  • 乗員:4名
  • 全長:74.1ft (22.81m)
  • 全高:6.65 m (21 ft 10 in)
  • 主回転翼直径:18.59 m (61 ft 0 in)
  • 空虚重量:10.500 t (23,150 lb)
  • 最大離陸重量:15,600kg (34,320lb)
  • 積載能力:14名または立席45名または担架16個。
  • 出力:2,520 shp (1,879 kW) × 3
  • 超過禁止速度:309 km/h=M0.25 (192 mph)
  • 航続距離:1,389 km (750NM)
  • 上昇限度:4,575 m (15,000 ft)
  • 上昇率:2,000 m/min

脚注

  1. ^ Baker, Peter. "Cost Nearly Doubles For Marine One Fleet". Washington Post, 2008年3月17日
  2. ^ 因みに時を同じくして、アメリカ空軍の戦闘捜索救難 (CSAR)用新型機として選定されかけていたHH-47も中止となっている
  3. ^ [1]
  4. ^ J Wings 2014年8月号

登場作品

バンテージ・ポイント』(2008年・アメリカ映画)
コンピュータグラフィックス作成の同機が登場。

関連項目

陸軍航空軍
空軍
1941 – 1962
回転翼機 (R)
  • XR-1
  • XR-2(英語版)
  • XR-3(英語版)
  • R-4
  • R-5
  • R-6
  • R-7
  • XR-8(英語版)
  • XR-9
  • XR-10(英語版)
  • R-11(英語版)
  • R-12
  • R-13
  • XR-14(英語版)
ヘリコプター (H)
  • H-12
  • H-13
  • H-15(英語版)
  • H-16
  • XH-17
  • YH-18(英語版)
  • H-19
  • XH-20(英語版)
  • H-21
  • YH-22(英語版)
  • H-23
  • YH-24(英語版)
  • H-25
  • XH-26(英語版)
  • YH-27
  • XH-28
  • H-29(英語版)
  • H-30(英語版)
  • YH-31(英語版)
  • YH-32
  • XH-33
  • H-34
  • XH-35
  • H-37
  • XH-39(英語版)
  • XH-40
  • YH-41
  • XH-42
  • H-43
海軍
1943 – 1962
クレーン (HC)
  • HCH(英語版)
観測 (HO)
  • HOE
  • HOG(英語版)
  • HOK
  • HOS
  • HO2S
  • HO3S
  • HO4S
  • HO5S(英語版)
輸送 (HR)
対潜 (HS)
練習 (HN・HT)
  • HNS
  • HTE
  • HTK
  • HTL
汎用 (HJ・HU)
  • XHJD(英語版)
  • XHJH(英語版)
  • HJP
  • XHJS(英語版)
  • HUK
  • HU2K
  • HUL
  • HUM(英語版)
  • HUP
  • HUS
  • HU2S
陸軍
1956 – 1962
輸送 (HC)
観測 (HO)
  • YHO-1
  • YHO-2
  • YHO-3
  • YOH-4(英語版)
  • YOH-5(英語版)
  • HO-6
汎用 (HU)
  • HU-1
実験 (HZ)
  • HZ-1(英語版)
命名法改正
1962 –
改番
継続
  • 攻撃機
  • 爆撃機
  • 輸送機
  • 電子戦機
  • 戦闘機
  • グライダー
  • ヘリコプター
  • 観測機
  • 対潜哨戒機
  • 無人機
  • 偵察機
  • 練習機
  • 汎用機
  • V/STOL
  • Xプレーン
  • 飛行船
イタリアの旗アグスタ
  • A.101
  • AB.102(英語版)
  • A.103(英語版)
  • A.104(英語版)
  • A.105(英語版)
  • A106
  • A109
  • A.115(英語版)
  • A129
  • AZ8-L
  • CP-110(英語版)
イギリスの旗ウェストランド
合併後
メリディオナリ/アグスタ
  • EMA 124(英語版)